U.小児疾患の分野

 当院で漢方治療の対象としている小児疾患を以下の表に示す。
 

小児科領域の漢方治療

T.急性疾患

感冒症候群、感冒性嘔吐下痢症、胃腸炎

U.慢性疾患

1.虚弱体質(反復性中耳炎、反復性扁桃炎など)

2.アレルギー性疾患(気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎など)

3.小児神経症(夜泣き、チックなど)

4.心身症(夜尿症、登校拒否症など)

 感冒症候群、感冒性嘔吐下痢症及び胃腸炎などの急性疾患では、漢方が効果的な場合がある。また、虚弱体質、アレルギー性疾患、精神神経疾患などの慢性疾患では漢方には、西洋医学にはみられぬ効果のあることがある。

1.虚弱体質の漢方治療

 この分野では、漢方の治療効果が優れ、漢方単独療法で十分な効果を上げている。反復性中耳炎、反復性扁桃炎の場合、小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏などの柴胡剤を中心に投与し、虚証のとき、桂枝加黄耆湯、黄耆建中湯などの方剤を用いる。起立性調節障害の場合、苓桂朮甘湯、小建中湯、半夏白朮天麻湯などを用いる。

2.アトピー性皮膚炎の漢方治療

 患者の病状や陰陽虚実に応じて漢方を投与し、良好な経過の得られることがある。当院におけるアトピー性皮膚炎のの漢方治療を紹介する。
 アトピー性皮膚炎の漢方治療とは、本治療と標治療に分けて行う。

1)本治療とは、患者の体質的虚弱を調整することである。胃腸虚弱体質の場合、小建中湯、黄耆建中湯、四君子湯など用いる。風邪をひきやすい体質の場合、小柴胡湯、柴胡桂枝湯などを用いる、など等。

2)標治療とは、患者の皮膚症状を陰陽虚実に応じてとることである。温・熱の強い場合、消風散、治頭瘡一方などを用いる。膿疱や化膿した所見がある場合は、排膿散及湯や千味敗毒湯などを用いる、など等。患者さんの体質・体調に応じて適応漢方方剤を選び、良好な治療効果が得られる。

 一般に急性期・重症例に西洋医学を優先して症状を抑える。慢性期・軽症中等症例には、漢方治療を中心に体質を整えるようにする。もちろん、アトピー性皮膚炎の治療には、薬だけでなく、日ごろのケアも大事である。皮膚を清潔に保ち、動物性脂肪、香辛料、砂糖などを控え、過労、寝不足、ストレスなどを避け、規則正しい生活を送りましょう。

3.小児神経症・心身症

 夜泣き、チック、夜尿症、登校拒否など、いわゆる精神神経症に関しては、漢方は得意とする分野であり、安神剤などが使われる。
 実証で柴胡加竜骨牡蛎湯がよい。虚実間で抑肝散を、虚証で桂枝加竜骨牡蛎湯、甘麦大棗湯がよい。当院では幼児の長期間の朝立ちには抑肝散加陳皮半夏を用い、また母子の精神不安症例に抑肝散加陳皮半夏の母子同服を用い良好な結果を得たので漢方学会誌に報告した。