中華民国生薬学会1996年学術総会参加と高雄医学院訪問(1996年4月)

「中華民国生薬学会1996年学術総会」が、台湾の台南で開催された。そこに、藤平健先生はじめ、富山医科薬科大学の難波恒雄教授と小橋恭一教授および私が招待され、参加した。学術総会後、台湾南部の医療事情もみてきた。

「中華民国生薬学会」は1991年に設立され、会員の大部分は薬剤師であるが、「西洋医学医師」も含まれている。会長の頼栄祥教授は、徳島大学の故東丈夫教授のもとで薬学を研究し、日本漢方にも造詣の深い方である。

台湾は、私の育った故郷である。私は16年前に先端医学研究のため、日本へ留学した。その後、西洋医学の限界に感じて、一方で日本漢方の素晴らしさを知り、西洋医学のみならず東洋医学にも真剣に取り組んで勉強をしてきた。まさか、台湾国家科学委員会の招待を受けて、台湾の漢方学会で講演することになろうとは思ってもみなかった。

始めに、藤平先生が、私の通訳で「日本漢方について」と題して、日本漢方腹診の歴史や理論について話し、その後モデルを使って腹診の実技披露を行った。参加者は、日本漢方腹診について第一人者から直接に話を聞くことができ、実技まで行ってくれたことに深い感銘を覚えていた。

次いで、私が「日本漢方腹診の臨床応用」と題して、最近の臨床例を示しながら、腹診の腹証による方剤の決め方について説明し、臨床における腹診の重要性を強調した。

その次に、難波教授が、「世界の伝統薬物の研究状況と民族薬物学の提唱」と題して、世界の伝統医療と薬物を紹介し、次にラボラトリースタディだけでなく、フィールドワークの重要性を指摘した。

4番目に、小橋教授が、「和漢薬成分配糖体は天然プロドラッグ-ヒト腸内細菌の役割-」と題して講演。ヒト腸内細菌の存在の違いによって和漢薬の薬効は個人差があり、証の異同の根拠を求める仮説の一つとなりうることについて話された。

午後には台湾側の発表があった。その中で、会長の頼栄祥教授が発表した「重要柴胡の基原植物および柴胡剤の慢性肝炎の治験例」が印象的であった。

翌日、私達4人は、難波教授のもとで薬学博士号を取得した林俊清教授の案内で、高雄医学院天然薬物研究所を訪問した。林教授の膨大な量の著書と生薬標本には、驚かされた。高雄医学院は私の母校であり、杜総明博士によって創立されて以来42年間の歴史があり、11学部と13の研究所を有し、3000人以上の学生が学んでいる。付属病院のベッド数は1200であり、最新医療設備を持ち、台湾南部のメディカルセンターとなっている。その後、高雄医学院学長である蔡瑞熊博士を訪問し、学校の発展の様子をうかがった。蔡博士は、東京大学で医学博士を取得し、日本漢方にも大変興味をお持ちの方である。

午後、私は、高雄医学院の臨床医を対象に、大学病院の講堂で「日本漢方、特に腹診について」と題して、講演をした。皆さんは私の講演に強い興味を示し、日本漢方の腹診が現代医学に重要である認識が深まったようであった。

(漢方の臨床 1996年7月号)