上海の医療事情について

 2006年の夏、漢方の大先輩、盛克己先生とともに、上海に8日間滞在し、友人を訪ねながら、上海の医療事情を見学してきました。この数年、上海の発展は目を見張るばかりで、特に中国の経済開放政策で上海特区の医療事情も大きく変化しています。「三級甲等医院」と呼ばれる一流Aクラスの総合病院は、特診部と呼ばれる外国人専用外来および特別病棟を作り、最新の設備をそろえ、一般病院の10〜30倍の料金で、サービスも欧米並みにしています。

 また、外国人駐在員とその家族を対象にした、外国人専用クリニックも多く、外国からの資本が注入されています。診療科目は、内科、小児科、産婦人科、歯科中心に、特に検診に力を入れています。

 まず、アメリカ資本のワールドリンクーメデイカル&デンタルセンターを訪問しました。ここでは十数名の米国留学経験をつんだ専門医を有し、盛先生の千葉大学同級生で、以前ニューヨークで開業し、その後上海に移住した楊先生と林先生も勤務しています。米国流のゆったりとした診療で、米国並みの診療費を徴収しています。患者さんは、主に外国の医療保険を持つ欧米の商社マンとその家族です。楊先生は婦人科専門医の傍ら、十大華僑画家に選ばれた著名な画家でもあります。先生の自宅の作画工房を見学した際、先生の自由奔放な手法に感心しました。

 次に、私の千葉大学呼吸器内科の後輩である五十嵐先生が勤務している、日本資本の上海グリーンクリニックを訪問ました。このグループの本院は岡山にあり、シンガポール・ロンドンにも分院があります。五十嵐先生は在任数ヶ月しかたたないにもかかわらず、中国語による日常の会話もマスターしており、びっくりさせられました。このクリニックは日系の商社マンとその家族を中心に診療し、日系の社員の検診にも力を入れています。

 その後、上海在住の友人である王教授を訪問しました。王先生の庭付きの豪邸は上海市内にあり、貴重な骨董品も多数陳列されており、目の保養となりました。先生は台湾の医大の脳外科教授を歴任し、台湾の資本により、台湾系の商社マンとその家族を対象とした病院の開設を準備していました。私の義理の弟(王先生の台湾大学の後輩・美容整形外科専門医)は、この病院の美容整形部門の顧問を依頼され、今回も一緒に視察をしました。また、盛先生と私も、この病院の漢方養生部門の立ち上げを相談されました。中国特区では、認可された外資系の医療施設では、外国の医師資格を持つ医師も診療できるようになっていますが、毎年の資格更新などの制限があります。しかし、特に台湾の医師資格を持つ医師は、中国による優遇政策により、近い将来特別の認可で、中国の医師と同じような待遇となる見通しです。このため、外資系の医療施設の中で、特に台湾資本による病院がどんどん進出し、競争も激化しています。その後、王教授は上海に300ベット以上の総合病院を買収し、各科の部長は台湾から有能な専門医を招聘し、2006年12月から開業しています。盛先生と私は、今後も機会があれば上海を訪問し、この病院の漢方医療に対するアドバイスをしていきたいと考えています。このような交流を通じて、中国の医療事情、特に漢方医療について今後もみていきたいと思います。

 最後に、私事になりますが、1993年から連続してきた日本東洋医学会総会での演題発表を、今年も継続し15回目の発表を行いました。また、昨年当院は日本東洋医学会指定研修施設に認定されました。千葉県の開業医としては、6軒目で、特に千葉県の東葛地域では、唯一の研修施設であり、今後は私も指導医として更に研鑽し、次世代の漢方医の教育に少しでも役立つよう念願しています。諸先生方には、これからもご鞭撻の程よろしくお願いいたします。
(市川市医師会報117号2007年)