中国・台湾から見た東日本大震災

今回の震災で浦安市が広い地域で液状化したことはよく知られていますが、当院も近隣にあり、しかも同じ埋立地であるため、震災時に液状化の被害を受けました。地震発生後最初の3週間は断水が起き、電話も不通(地下ケーブルの損傷)の状態でした。その後も生活物資やガソリンの不足、計画停電、水道水の放射能汚染などに見舞われました。そのような報道を聞いてか、国内の他の地域からだけではなく、中国・台湾・香港の友人、特に漢方関係の方からお見舞いの手紙や物資を送っていただきました。大変心強く有難く思いました。

私の家内はと言うと、米国の友人の助言もあり、直ちに台湾の実家に避難、一週間後義理の娘と孫も台湾に発ちました。連日台湾のメディアが東日本大震災の惨状、特に原発の放射能漏れについてトップニュースで伝えていたようで、その過熱ぶりからか、日本に残っている我々よりも、家内や娘の目には、日本の状況ははるかに深刻に映り、大変心配していたようです。
 ゴールデンウィーク以降、余震が減少したことや、原発が以前より安定した状態になったこともあり、中国や台湾の友人にお礼の挨拶をするために、1週間かけて台湾と香港を回ってきました。以下、今回の震災に対して、中国や台湾がどのような反応を示したか述べます。

1)中国の反応
昨年9月、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で一気に冷え込んだ中日の関係が、今回の震災を機に好転しているように見えます。2008年、四川大震災の際の日本の支援に対する感謝の意が、今でも残っていることもあり、今回の震災発生後には中国政府は積極的に、経済的・人的支援を行いました。更に民間からも多くの義捐金が集まっただけでなく、福島原発に大型ポンプ車(大キリン)を寄贈したことも印象的でした。中国の民衆は今回の地震、津波、原子力災害という一連の未曾有の苦難を通して、以下の点について、日本人の対応に敬服しています。一つ目は冷静な行動で秩序を保ったこと、二つ目はお互い助け合う姿勢、三つ目は苦難に耐える我慢強さです。ある中医薬大学の学長は、このような日本人の行動を称賛し「日本人が素晴らしい自信と誇りを持っているのだから、日本は必ず近いうちに復興できると信じている」と言っています。
香港でも民間から多額の義捐金(2660万香港ドル)が集まりました。今回の震災発生後、ジャッキー・チェンを中心に芸能界に支援の輪が広がり、『愛に国境はない311キャンドルコンサート』を開催。宮沢賢治が残した『雨ニモマケズ』を翻訳して合唱したことは感動的でした。

2)台湾の反応
 台湾では今でも親日的な雰囲気が根強く、今回の震災に対し約170億円の義捐金が集まりました。これは海外からのものとしては、際立った金額です。私の台湾滞在中、多くの人々から聞いた話では、今回の義捐金は大口のものもありましたが、大部分は多くの人々が少しずつ出し合ったものだそうです。台湾国民が親日的であることが改めて証明されたと言えます。台湾政府も積極的な支援を表明しています。震災後の台湾から日本への観光客の減少を受けて、馬英九総統は「旅行への影響を最小にすることが我々の一貫した政策だ」と述べ、人気の北海道向けなど訪日観光客の回復を後押しする考えを示しました。
一つエピソードを紹介させてもらいます。今回の台湾からの義捐金については、台・日間の外交関係が微妙であるせいか、日本政府から台湾政府に直接には正式に感謝の意を表していないようです。しかし、この事実を知った日本のある方々が、ネット上で呼びかけを行い、お金を集め、台湾の大手新聞数社に支援に対する感謝のメッセージを載せました。それを見て、台湾民衆が日本人の「礼儀正しさ」を再び称賛したとのことです。国と国の関係は、政府間の努力も重要ですが、やはり一人一人の間の心の絆が更に大きな力を持つことを実感させられました。

3)日本の産物に対する風評
 台北と香港の街を回りましたが、ゴールデンウィークであるにもかかわらず、日本人観光客が少ないことが印象的でした。スーパーでも、今まで高級品として愛用されていた、日本産農産物・水産物が陳列台からほとんど無くなっていました。また、台北にある行きつけの日本料理店に立ち寄ったところ、店主の話では、震災直後、お客さんが6割から7割減で、5月初旬時点でも3割から4割減だとのことでした。カウンターで出た料理をいちいち説明し、日本産でないことを強調しなければならないほど厳しい状況だったようです。それで、韓国産の太刀魚や台湾沖で獲れたマグロ等日本産じゃないものを勧めてくれましたが、やはり北海道の雲丹が一番おいしかったです。風評に対しては、個人の力だけでは不十分で、日本政府が原発安定化に全力を注ぐことは勿論ですが、もっと放射能のデータを積極的に公開し、汚染した産物の流通を厳しく制限すること等が重要であります。おいしくて健康にもよい日本料理が再び人気を呼ぶ日を望み、さらに、外国特に近隣諸国からの観光客の回復を期待してやみません。

「漢方研究」2011年8月号