「高雄市立中醫醫院」を訪問(1998年12月)

 この病院は、台湾で初めての公立漢方専門病院であり、1983年に高雄市に設立された。診療科目は内科・婦人科・針灸科・傷科であり、1日約6O0人の外来患者を診療している。訪問当日、劉景昇院長先生が外国出張のため、楊淑齢副院長(婦人科部長兼務)が案内をしてくれた。この病院は、漢方の専門病院でありながら、現代医学の生化学検査設備、X線撮影装置、超音波装置などを有し、最新のコンピューターシステムを導入している。

 診療状況は、四診(望・聞・問・切)と弁証論冶を重視し、日本で行われている腹診はしてない。内科では、主に呼吸器疾患、心臓血管疾患、消化器疾患、腎泌尿器疾患、精神神経疾患などを診療している。婦人科では月経困難症、更年期障害、不妊症、冷え性、不正子宮出血など、また、針灸科では脳卒中後退症、三叉神経痛、顔面神経麻痺、五十肩、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、更年期障害など、さらに、傷科では骨折、脱臼、打撲、捻挫、関節運動障害、腰痛症などの疾患を扱っている。

 台湾の医療保険制度では、漢方診療と漢方エキス剤の処方は保険扱いになっているが、煎じ薬は含まれていない。したがって、この病院の8割以上の患者には、漢方エキス剤が処方されている。 台湾には、300薬方以上の漢方エキス剤があり、『傷寒・金匱』によるものだはでなく中医の温熱病の薬方も含まれている。処方の仕方は、単一または複数の薬方を合方するか、または、単一の薬方に単味の生薬エキスを加味しているようである。

 この病院の10数名の中医師の大部分は、中医師と西洋医師の両資格を有する中西医師である。例えば、楊淑齢副院長は中医婦人科の専門医であるが、西洋医学の産婦人科の研修歴もあり、生理学の博士号も有している。また、針灸科の沈哲民部長は、針灸の専門家であると同時に西洋医学の内科研修歴もある。

 入院治療については、この病院に隣接する「高雄市立民生醫院」((西洋医学の総合病院)と提携していて、西洋医師と協同診療している。今後、自病院内に入院設備を整備して、漢方による入院治療にも注力したいということであった。(漢方研究、1999年8月号)