中華民国生薬学会2002年学術総会への参加(2002年5月)

 開催地は、高雄医学大学であった。本総会への参加は、私にとっては2回目である。1回目は、1996年4月で、恩師の故藤平健博士とともに台湾国家科学院の招待を受け、中華民国生薬学会1996年学術総会で講演した時であった。その時のことを今でも鮮明に覚えている。というのは、1996年3月、台湾総統選挙の関係から中国の軍事演習が始まり、台湾海峡の緊張が高まり台湾に行けるかどうかという状況になったが、選挙が終わると騒ぎが静まり無事参加できたからである。

 1996年の総会では日本漢方腹診の第一人者といわれた藤平先生が「日本漢方腹診について」と題して、日本漢方腹診の歴史、理論および実技を披露した。続いて私が、「日本漢方腹診の臨床応用」と題し、臨床例を提示しながら日本漢方腹診の腹証による漢方方剤の決め方について講演した。これにより、日本漢方腹診法を中華民国生薬学会員に初めて伝えることとなった。今回、6年ぶりに総会に出席したところ、演者の一人の李麗華先生が日本漢方腹診法を応用して漢方方剤を選び、卵巣嚢腫二症例を治したとの発表を聞き、驚くと同時に大変嬉しく思った。藤平先生は、生前三度台湾を訪問して漢方の種を蒔いたが、それが稔り始めていることを見て、先生の偉大さを改めて強く感じた。

 現在、中華民国生薬学会の理事長は、富山医科薬科大学大学院出身の林俊清教授で、日本漢方界との絆が強いことから今総会には多数の日本の先生が招待され、特別講演を行った。基礎の面から金沢大学の御影雅幸教授が「The Anatomical and Chemical Study of Himalayan Ephedra」と題して、昭和薬科大学の田代真一教授が「Glycosides can be absorbed from Rectum without any Cemical Change」と題して、長年の研究成果及び最新の研究知見を披露して、大きな反響と高い評価を得た。また、臨床の面から私が「Kampo Therapy for Bronchial Asthma 」と題して当院の漢方で奏功した気管支喘息症例を提示しながら.気管支喘息に対する漢方方剤の選び方を紹介した。出席者の中の特に臨床関係者に強い関心を与えた。

 その後、台湾側からも多数の発表があった。6年前の総会では、台湾側からは臨床治験例が多かったが、本総会では生薬による肝炎と肝癌などの基礎研究が多かった。台湾の漢方生薬の基礎研究の深さや進歩に感心した。(漢方研究、2002年8月号)