上海中医薬大学を訪問(2003年1月)

 本大学は、私にとっては2回目の訪問である。上海中医薬大学は、1956年創立、中国では歴史があり、有吊な中医師養成大学である。特に、20数年前に国際教育学部を作り、80カ国以上から留学生を受け入れ、4,000吊以上の外国人中医師を養成した。

 今回、10数年来の友人である兪雪如教授の研究室を訪ねた。先生は、本大学と大学院を卒業し、その後、病院で実地診療を積み、1988年笹川医学奨学金で千葉大学に留学し、中医診断学・望診の研究をした。89年からは、日本漢方の大家である藤平健先生に師事し、中医学だけでなく日本漢方にも精通した。先生の著書は中国に多数あるが、日本でも「気・血・水《(たにぐち書店)を出版し、日本の漢方界から高い評価を得ている。

 兪先生と私は同じ藤平門下生であり、先生の日本滞在中の2年間、中医学について多くの教授を受け、大変お世話になった。現在、先生は59歳であるが 精力的に漢方医学を研究し近く出版予定の著書ついて話してくれた。その旺盛な研究ぶりには感歎した。

その後、構内にある一般には未公開の医史博物館を案内してくれた。この博物館は、1938年に創設され中国では最も古い医学史博物館である。中には、石器時代から清朝までの多くの貴重な医学文献が収蔵されていた。文物と写真を使った展示で、中国各時代の医学発展の過程が示され、中国医学の伝統の深さを感じた。

 上海中医薬大学を訪れたのは8年ぶりであったので、さまざまな変化、進歩を感じた。一番強く感じたのは兪教授のような伝統医学理論を重視したり、豊富な臨床経験を持つ中医師が少なくなったことである。つまり、西洋医学のように、試験管を振り、動物実験を行い、論文作成に注力する若い教授が増えたのである。これは、時代の変化や医学の進歩によるものであろうが、私にとってほ少し淋し気がした。(千葉県医師会雑誌55巻4号2003年)