「中華民国生薬学会2005年学術総会」へ参加(2005年5月)

 中華民国生薬学会2005年学術総会は、今年5月1日、台湾の台南で開催された。中華民国生薬学会は1992年に設立され、運営に携わる理事の中には日本への留学経験者が多く、以前から日本漢方界との交流を深めてきた。特に前任理事長の林俊清教授(富山医科薬科大学大学院出身)と、現任理事長頼榮祥教授(徳島大学大学院出身)は、日本漢方界との絆が深く、日本でも有名な漢方研究者である。この関係で総会には毎年日本から数名の先生方を招待し、特別講演を行ってきた。今年の総会の特別講演は、千葉古方を学ぶ会会長の盛克己先生(共同演者・筆者)と、崇城大学薬学部の村上光太郎教授である。筆者にとって1996年(招待講演)、2002年(特別講演)に引き続き3回目の参加である。

特に今回の開催地の嘉南薬理科技大学は、1996年総会と同じ場所であり、印象に残っている。その時の総会には、恩師の故藤平健博士と富山医科薬科大学の故難波恒雄教授および小橋恭一教授も招待され講演を行った。大会前日の歓迎会の席で、大変お酒の強い藤平先生と難波先生二人の楽しく且つ豪快な飲みっぷりは、周りの人をはらはらさせたが、翌朝の講演では両先生とも何事もなかったかのように、立派な研究成果を披露し、大きな感銘と高い評価を与えたことを今でも鮮明に覚えている。

 今回の総会では、臨床の面から盛先生が「高血圧の漢方治療―漢方薬単独でコントロールできた高血圧症例の検討―」と題して、両院(もり内科クリニックと恩明会塩浜宮崎医院)において、漢方薬単独治療でコントロールできた高血圧症例(57症例)中心に検討し、高血圧に対する漢方方剤の選び方も解説した。特に漢方薬単独でコントロールできた高血圧症例の、投与薬方の内訳は、七物降下湯16例を筆頭に、真武湯11例に続き、釣藤散・黄連解毒湯各10例など21薬方に及んでいる。その中、七物降下湯、釣藤散など半数近くの薬方を「後世方」が占めていたことを示した。出席者の中、臨床関係者が多いため大きな反響を呼んだ。


 基礎の面から村上教授が「生薬を使った無害農薬および、抗MRSA,抗ピロリ菌活性生薬の探索」と題して、89科200種の植物性生薬に対する抗菌活性の測定結果を示した。MRSAに対しクララの根茎根、リュウキュウアイの地上部などに強い抗菌性とアイルスマー活性を認めた。また、ピロリ菌に対しザクロの葉、金銀花などに強い抗菌性を認めた。今後、先生はそれぞれの科の植物数を増やし、生薬界の抗菌性のマップを作成することを表明し、今後の研究に多くの期待が寄せられた。

 更に、会長講演は頼榮祥教授が「桂皮の関連知識と応用」と題して桂皮の出典と品考、および桂枝湯と桂枝湯加味方の応用を中心に講演した。基礎から臨床まで長年の研究成果を幅広く披露し、先生の研究の深さを実感した。

 以下、台湾からの主な発表を紹介すると、高雄医学大学薬学院の林俊清教授は「抗肝癌、抗肝硬変化、抗肺線維化の生薬資源の研究」と題して講演した。抗肝癌には、柴胡・霊芝・黄連・半枝連などに抗肝腫瘤作用を認めた。抗肝硬変については、高氏柴胡が優れた抗肝線維化作用を認めた。抗肺線維化については、銀翹散・魚腥草・連翹などに抗肺線維化作用を認めたことを発表した。

 台北医学大学薬学部の陳世銘助教授(千葉大学薬学部大学院出身)は「ラットにおける加速型腎毒血清腎炎実験模型の確立と、腎炎に対する澤瀉の薬効評価」と題して講演した。加速型腎毒血清腎炎の実験模型ラットを確立し、そのラットを使って腎炎に対する澤瀉の薬効を検討した。将来この実験模型ラットを使って、糸球体腎炎の治療薬物の開発に貢献する研究が待たれる。

 その他、生薬の基礎研究から漢方の治験まで、多数の発表があった。特に生薬の基礎研究については、レベルの高い発表が見られ、今後の漢方医学の発展に寄与していくことが期待される。

 また、5月20日〜22日まで富山で開催された第56回日本東洋医学会総会には、頼榮祥教授も出席された。先生は御多忙にもかかわらず、毎年日本東洋医学会総会、日本生薬学会総会と日本和漢薬学会総会に参加するなど、並々ならぬ情熱で台湾と日本の漢方医学交流の中心として活躍し、その存在は特筆に価する。今後も台湾出身の筆者も微力ながら、台湾と日本の漢方医学の発展に貢献していきたい。
(漢方研究2005年8月号)