小児の漢方治療


2010年3月市川FM健康番組出演時のインタビューから
    

Q1:漢方がご専門の宮崎瑞明先生に最近の小児漢方治療について伺います。まず、小児漢方治療の現状について教えてください。

A1:小児の場合、まず薬が飲ませにくいし、手間もかかるので、全く心の準備がない親御さんに漢方を勧めても抵抗があるというのが正直なところです。しかし、小児治療の現場では、漢方の得意な分野もあるし、西洋医学的治療では不十分な場合、漢方でそれを補うこともあります。

Q2:漢方の観点から見て、小児にはどんな特徴がありますか。

A2:一般的に子供は「陽証」ととらえます。エネルギーに満ちている状態を指します。「陽証」は、病気に対しては、症状が比較的表れやすいのですが、旺盛な自然治癒力があるので、治りが早いという特性があります。漢方薬が病状と体に合えば、よく効きます。

Q3:小児漢方治療の得意分野を教えてください。

A3:漢方が比較的得意とする病気を急性疾患と慢性疾患に分けます。まず、急性疾患では、風邪症候群、感染性胃腸炎などに対し、漢方治療は良い効果が有ります。特にウイルスに起因する風邪、下痢症、嘔吐症に対し、よく効きます。

Q4:そのような症状に対して、どのような漢方を使いますか。

A4:例えば、風邪の場合、よく麻黄湯、小青竜湯など、麻黄が入っている薬方が用いられます。嘔吐症の場合は五苓散がよく用いられます。高熱が続いて気管支炎や肺炎、脱水症に移行したりすれば、抗菌剤、点滴を使うなど西洋医学的治療を優先させます。

Q5:小児漢方治療で期待できる慢性疾患について教えてください。

A5:治療効果が期待できる小児慢性疾患には、@反復感染(特に反復性中耳炎、反復性扁桃腺炎など)、易感冒(風邪を引きやすい状態)、A自律神経疾患、B小児神経症などがあります。

Q6:一番目の反復性中耳炎、反復性扁桃腺炎、易感冒の漢方治療について教えてください。

A6:反復性中耳炎、反復性扁桃腺炎、易感冒の子供は、漢方医学的には、虚弱体質といいます。日頃から元気がない、食が細い、風邪にかかりやすい体質を指します。このようなお子さんは感染を繰り返し、その上治りにくいという特徴があります。漢方薬は様々な生薬が総合的に作用し、体質の改善や病気の予防と治療につながります。この場合、胃腸のパワーを高める建中湯類や免疫力を高める柴胡剤が用いられます。

Q7:二番目の自律神経疾患の漢方治療について教えてください。
A7:自律神経疾患には、まず、「起立性調節障害」と「夜尿症」が多く見られます。「起立性調節障害」とは、主に小中学生によく見られる病気で、症状としては、朝なかなか起きられない、だるさ、立ちくらみ、頭痛、動悸などが見られます。原因としては、小児の自律神経機能がまだ不安定で、血圧調節機能が十分作用しないことが挙げられます。これは漢方医学的には、気が不十分で水の流れが滞っている状態です。補中益湯、小建中湯などの補剤と水の代謝を調節する苓桂朮甘湯などが用いられます。

Q8:次に夜尿症の漢方治療について教えてください。

A8:夜尿症とは、いわゆる「おねしょ」のことです。一般的に身体的原因のない機能的夜尿症をさしています。夜尿症の漢方治療は、気が不十分な場合、小建中湯や人参湯などの補気剤が適応となります。ストレスに関与し、精神不安定で、気の流れがスムーズじゃない場合、桂枝加竜骨牡蠣湯や甘麦大棗湯などの安神剤(精神を安定させる方剤)が適応となります。その他に、四肢の冷えが顕著で「寒証」の病態を呈する場合、八味地黄丸などの温剤(温める方剤)が適応し、口渇、多尿で熱証の病態を呈する場合、麻杏甘石湯などの清熱剤(冷やす方剤)が適応となります。

Q9:三番目の小児神経症の漢方治療について教えてください。
A9:よく見られるのは、夜泣きです。小さい子供は神経面でも未発達のため、怒りや不安など様々な感情が爆発しやすいです。漢方医学的には、自律神経の高ぶりと捉えます。「癇が強い」と同じ意味です。漢方的治療は、その高ぶりを抑え、精神のバランスを保つことにより、子供の心の安定を図ります。甘麦大棗湯、抑肝散などの安神剤が用いられます。

Q10:臨床的に治りにくい病気で、漢方薬と西洋薬の併用で効果が期待できる疾患を教えてください。

A10:いくつもありますが、我々がよく経験している小児気管支喘息とアトピー性皮膚炎について述べます。両者ともアレルギー性疾患で、現代の西洋医学的治療でも治癒しにくい疾患です。

Q11:小児喘息に悩んでいるお子さんをよく見かけますが、どんな治療が有効なのでしょうか。

A11:小児喘息は、近年治療薬の進歩で、中軽症の場合、西洋医学的な治療だけで対応できますが、比較的重い場合は、なかなか抑えられないこともあります。この際、漢方併用により、全身の状態を改善し、西洋薬の薬効を高め、副作用も軽減することができます。小児喘息の漢方治療では、急性期の場合は麻杏甘石湯などの麻黄剤を中心とします。慢性期の場合は、柴胡桂枝湯などの柴胡剤が中心に用いられます。更に、安定期には小建中湯類などの補剤が適応となります。

Q12:アトピー性皮膚炎も治りにくい疾患ときいていますが、漢方治療の効果はいかがでしょうか。

A12:アトピー性皮膚炎は、いろいろな治療法が行われますが、意外に難治例が見られる小児疾患の一つであります。その漢方治療は根本治療と対症治療に分けられます。根本治療は、アトピー性の成因となる体質的虚弱を調節します。よく小建中湯、黄耆建中湯や柴胡桂枝湯など補気、補血、滋潤作用のある処方を用います。対症治療は、現われている皮膚症状を中心に対応します。よく消風散、五苓散、排膿散及湯など、清熱、利水、抗菌作用のある処方を用います。このように、正確に症状をとらえ、適応方剤を選択すれば、改善を得られる症例が多く有ります。

Q13:最後になりましたが、漢方の服用で、何か注意点はありませんか。

A13:もちろん、漢方も薬の一つです。選択を間違えれば、副作用が出現する可能性もあるし、もちろん投与量も関係しています。充分に注意しなければなりません。できるだけ、漢方専門薬局、また漢方専門医のところで相談した方がいいと思います。